郵送アンケート調査の回収率
郵送アンケート調査の回収率の目安は概ね30%前後です。最近では協力率がやや下がる傾向があるため、25%前後の方が現実的で30%は目標といった方が正確かもしれません。
実際のアンケート回収率には差があり、経験上10%〜40%に収まることがほとんどです。回収率は対象者の抽出方法、調査内容、調査方法、謝礼の有無など複数の要因によって決まります。そのため予測することは難しいのですが、当社で受託する場合は次の方法で調査設計を進めています。
1.過去の調査の回収率
同じ調査を過去実施していれば、その回収率を参考にします。全く同じでなくても同じクライアントで類似調査があれば参考にします。
この回収率を元に、リスクを考慮して調査設計をします。同じような調査だけどページ数が多いのでやや低くなる可能性がある、というような形です。また、分析上は回収率が低くても対応できるように考え、見積上は予算が見積もりを超えないように高くても大丈夫なように考えます。
例えば過去の同じ調査が発送数1,000回収280票(有効回収率28%)の場合、回収率が低めの25%で250件票でも分析できるかを検討します。一方で予算上は30%の300票でも大丈夫かを確認します。
2.類似の調査の回収率
類似の調査があれば、それを参考にして決めて行きます。アンケートといっても色々あり、例えば商標登録のためのアンケート調査であれば過去の他社の事例などが参考になります。守秘義務の関係から詳しくはお知らせできないケースもありますが、アンケート調査の会社であれば事例を多く持っているので、ある程度の推測は可能です。
行政によるアンケート調査、大学や研究期間によるアンケート調査であれば、ウェブで公開されていて回収率がわかるケースもあるので、類似の調査であれば参考にできます。
3.上記以外
上記以外は回収率を25%に仮置きして、アンケート調査の回収率が高くなる要因、低くなる要因を総合的に判断して経験から決めることが多くなっています。仮に標準的に25%の予測で進められそうと判断した場合、実際の回収率の上限、下限に余裕をもたせ、20〜30%でアンケートの実施が可能かを判断します。
回収率の目安
回収率を決める要素は幾つかありますが、調査の種類によってもある程度変わってきます。目安としては次のとおりです。もちろん同じ性格の調査であっても、調査内容等によって差が生じますので、一般に回収率が高くなりそうかどうかの目安です。
高い回収率が見込まれるもの(40%以上)
- 事前に募集した消費者に対する調査(サービスモニターなど)
- BtoBで業務上重要と思われるもの(クライアントからの調査依頼など)
- 業界団体など各種団体の会員向け調査
- 市区町村による生活に密着した調査
- 県や国による調査のうち、重要度が高いもの(政府統計など)
普通の回収率が見込まれるもの(20〜40%)
- 消費者に対する顧客満足度調査(CS調査)
- 県や国による調査、一般的な意識調査
- 大学や研究機関による意識調査
低い回収率が見込まれるもの(20%以下)
- 上場企業を対象とした調査
- 不特定多数の企業・個人に対する調査(電話帳情報からランダムに送るなど)
- 特定の傾向をもった団体からの調査
回収率の半断時期
回収率が高くなりそうか、低くなってしまいそうかの判断は、アンケートを配布して週末を2回超えた時点である程度わかります。週明けに郵便が多いこと、個人の場合週末に回答することが多いことがその理由です。回答は配布直後と締め切り前が多くなります。
配布してから週末を2回超えた時点で、目標回収率の6割以上でない場合は、回収率の達成が難しくなるので、督促等の準備をします。ただし、法人向けの調査で数字などを調べる必要がある、または複数で回答する場合などに更に時間がかかる場合があります。
回収率の向上策
アンケート調査の回収率が低くなる主な3つの条件
- 調査の意図がわからない場合は、回収率が低くなります。調査の意図がわからないということは自分が回答する必要があるかわからないことにつながります。調査意図を明確にし、誰に回答してもらいたいかをわかりやすくします。
- 答えにくい場合も回収率は低くなります。質問内容がわかりにくい、自分にあてはまる選択肢がない、自由回答がやたらに多いなどが主な理由です。質問を飛ばす必要がある場合に次にどの質問を回答して良いか不明確な場合も含みます。
- 調査票のページ数が多い場合も要注意です。4ページ程度までならプラス要因、8〜12ページなら標準、16ページ以上ならマイナス要因になる可能性があります。
アンケート回収率の主な3つの向上策
- 調査票が送られてきた理由を明記する。回答者から問い合わせが多い内容の一つが「なぜアンケートが送られてきたか」です。なぜ、調査票が送られてきたのか、どこから情報を得たのかを明示することが不安要素を減らすことになります。
- 督促の効果は限られていますが、はがきでの督促や法人への電話での督促はある程度有効です。あくまでも忘れている方へのお知らせが主な目的となりますが、調査の締め切りを過ぎてしまった場合には回答不要と考えている方もいるので期限を延長するお知らせも有効です。
- 謝礼を提供する。個人や中小企業の場合は有効です。謝礼は調査内容によって100円程度の粗品(ボールペンなど)から1,000円程度までが一般的です。粗品であれば事前に配布する方が望ましいです。回答者のみに配布するのはかえってコストがかかりますし、個人の場合、送付先が知られることに抵抗があるケースも多くなっています。
法人向け調査(BtoB)の回収率向上策
- 事前に送付先を特定する。ある程度の企業規模であれば郵便は総務が処理します。具体的な相手先がわかれば確実に届きますが「○○御中」や「○○ご担当者さま」などでは適切な相手先に届かない可能性があります。できれば個人名、少なくとも部署を特定することができれば回収率は高くなります。回収がない場合も督促がしやすくなります。
- 業務上のメリットがある場合には、回答率が高くなりますのでこれを明示します。クライアントからの調査なので、回答すると有利(あるいは回答しないと不利)といった直接的なものでなくても、また回答者のみに調査結果を提供することも、内容によっては情報収集の観点から業務上のメリットに含まれます。
- 上場企業の場合などはアンケートの依頼が多いため、公的な調査、義務的なアンケート調査のみ回答するケースがあります。公的な調査、義務的なアンケート調査に該当する場合は明示する必要があります。
まとめ
アンケートの回収率は低くなる傾向にあります。アンケートへの協力は任意のことが多いので、回答者が回答しようと思っていただけるようにすることがポイントになります。
アンケートの回収率を決める要素は多くあり、回収率の判断には経験が必要になります。最近ではネット上でアンケート調査の報告書が公開されていることも多く、そこに示された回収率を参考にできます。
- このコンテンツは検索エンジン経由でFAQの回収率のQ&Aへのアクセスが多いことから解説のために作成したものです。